今月は、兵庫医科大学脳神経外学講座主任教授 吉村紳一先生を講師に迎え、「脳血管治療の最前線」をテーマに講演会を開催しました。当日は、地域の医療機関の先生方にもご参加を賜り、非常に盛況な講演会となりました。
吉村先生は脳卒中の診断と手術(外科手術・脳血管内手術)について、国内でも屈指の先進技術をお持ちで、3000件以上の手術実績があり、現在も臨床医として診療にあたりつつ、後進の若手医師育成にも精力的に取り組まれています。
講演では、吉村先生が勤務する兵庫医科大学で実際に行っている治療の様子や、血管内治療に用いる最新機器の機能を動画影像でご紹介頂き、視覚からダイレクトに理解ができる内容となっていました。ある患者さんの場合、脳の奥にできた大きな脳動脈瘤が視神経を圧迫して左目の視野に障害が出ており、命に関わるくも膜下出血の危険性が高く治療を希望しましたが、幾つもの医療機関で治療困難と診断され、深刻に悩まれていました。
そんな中、友人が吉村先生の評判を聞いて兵庫医科大学を受診。吉村先生は入念に精査した上で、「フローダイバーター」と呼ばれるメッシュ状の筒型装置を用いた血管内治療を施行し、脳動脈瘤への血流を遮断することに成功。術後の合併症もなく、視覚障害も消失。その回復状態に感銘を受けました。
フローダイバーターはつい昨年から日本で実施されるようになった治療法で、今回の様に従来では治療困難とされた症例とも戦える最新治療機器です。まだ日本では一部の医療機関での運用ですが、今後、全国的に普及していくことが期待されます。
このような最新の医療機器の進歩と熟練の技術により、患者さまの生命・QOLを守ることが出来ること、また身体への負担が少なく回復も早いこと等、患者さまにとっては本当にメリットの大きな希望の持てる治療であることを実感しました。他にも、地域の医療機関とネットワークを図り、脳梗塞・急性期の治療を迅速に行うDrip-sip等、数多くの革新的取り組みを行われており、吉村先生の「患者さんを救いたい!」という情熱に感動しました。
これら全ては、吉村先生が大事にされている「病変の熟知」、「万全な準備」、「丁寧な治療」の実践あってこその成果であり、私たちを含め全ての医療関係者に通じるものとして、深く心に残りました。
最新治療が一日も早く全国に普及していくことに期待し、私たち医療者は絶えず自己研鑽に励み、患者さまの命を守る知識・技術の習得に努めて参ります。
地域医療連携室 安倍