2月29日、宇佐市医師会・豊後高田医師会主催の症例検討会が行われました。
当日は粉雪が舞い散る寒さでしたが、多くの先生方が参加され、宇佐高田医師会病院より2題、宇佐市内の医療機関から3題の症例発表がありました。
当院からは消化器内科・大森医師より「ランソプラゾールによるCollagenous colitis(膠原繊維性大腸炎)の1例」と題し発表いたしました。
慢性の水様性下痢の原因の一つとされるCollagenous colitisは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やNSAIDs,アスピリンなどを併用している患者さまにおいて、近年症例報告が増えている疾患です。画像上、血液検査上、内視鏡検査では明らかな所見を認めず、大腸粘膜からの内視鏡的生検にて異常を認める大腸炎で、女性患者さまが男性の約7倍と多く、年齢のピークは65歳前後となっています。
今回の症例では70歳代の女性患者が難治性の水様性下痢により消化器内科を受診。逆流性食道炎によりランソプラゾール(PPI)を内服しており、PPIによるCollagenous colitisを疑い内視鏡生検したところ、大腸上皮直下にCollagen bandの肥厚を認めました。ランソプラゾール内服中止により、速やかに下痢症状は消失しました。
Collagenous colitisが起きる原因は今のところ不明とされています。遺伝的素因・腸管感染、自己免疫性、胆汁代謝異常など様々な因子が指摘されていますが、確定はされておらず、今回のように薬剤起因性のこともあります。
薬剤起因性の場合は、原因薬剤の中止のみで症状は改善し治癒します。しかし、薬剤の関与が認められない場合、または原因薬剤の中止が不可能な場合には別の薬剤にて投薬治療を行います。
大森医師は難治性の慢性下痢の原因として薬剤処方の見直し・内視鏡的生検についての積極的施行の意義について報告し、会場から貴重なご意見・質問を頂きました。
本症例発表会は宇佐市医師会・豊後高田市医師会の医療機関が地域の症例について情報共有し、相互の専門分野について見識を深める機会となり、連携を図る上で非常に有意義な時間となっていると感じました。今後も積極的に演題発表に参加させて頂きたいと思います。
地域医療連携室スタッフ