11月の1ヵ月間、大分大学付属病院から初期臨床研修医の古寺紀博先生が、地域医療実習のため当院に勤務されました。

2004年より、医学部を卒業した医師は2年間の初期臨床研修が必修化されています。

この制度は、研修医が幅広い診療能力を身につけ、アルバイトをせずに研修に専念できる環境を整えることを目的としています。全国の病院から研修先を自由に希望できる制度のため、どうしても都市部の有名な病院に希望が集中する傾向にあり、大分県では臨床研修医の確保に大変苦労しているのが現状です。

古寺先生は大分大学医学部を卒業し、大分県内での臨床研修を選択した、まさに期待の星といえます。

古寺先生は宇佐市内の小・中・高校を卒業された、生粋の宇佐っ子です。当院では、医師をはじめ看護師・リハビリスタッフなど多くの先輩や後輩が仕事をしており、地元の話題や宇佐あるあるで、歓迎会はとてもアットホームに盛り上がりました。

 

当院では、研修指導医(大森です)に同行し、病院内での外来診療や救急対応を経験されました。

救急外来では、脳卒中や意識消失発作などの脳外科疾患、肺炎や胃腸炎などの内科疾患を中心に、複数科にわたり診療を経験されました。当院へは軽症から重症疾患まで幅広く患者さまが受診されます。都市部の大病院とは異なり、ご高齢の患者さまがとても多いことが印象的だったようです。

指導医と共に入院患者さまも担当し、病棟の回診や看護師・ソーシャルワーカー・リハビリスタッフとのカンファレンスを通じて、多くの病気が併存する高齢者医療の現状を学んで頂きました。

患者さまの家屋調査にも同行し、退院後に自宅で安全に生活できるかどうかについて自宅内での導線や段差の確認等も経験されました。

藤井副院長や阿南医師に同行して地域へ飛び出し、施設やご自宅への訪問診療も行いました。診療や投薬のみならず、療養上の相談や指導、予防接種、胃ろうや尿道カテーテルの交換など、往診医の業務内容を直に学ぶなど、日々積極的に患者さんと関わり研鑽を積まれました。

また、介護認定審査会や地域包括ケア会議など、地域医療の現状を知るための院外活動にも意欲的に参加されました。特に介護認定審査会では、主治医は日頃の申請者の心身状態を把握・理解している為、「主治医意見書」は介護認定審査会において公正な審査・判定の基礎資料とされており、地域の方々の暮らしを支える医師の一つの責務としてより深く認識されたようです。

研修の最後には研修発表会を開催し、1ヵ月間の研修についてユーモアを交えて報告されました。少子高齢化を地元の病院で身をもって体験し、地域医療に高齢者医療は切り離せないことを実感したそうです。また医療は細分化・専門化が進んできましたが、地域医療においては専門性+αの幅広い診療能力が必要であると学んだ1ヶ月でした。

消化器内科 大森 薫